うたこさんとえめさんより

【『まどべラッププロジェクト』をふりかえって】

『まどべラップ』プロジェクトでは、子どもたちとの作戦会議『オンラインパーク』とは別に、“うたこさんとえめさん“で各回をふりかえり対話しながら丁寧にプロジェクトを進行し記録を重ねてきました。この場では、それぞれが、プロジェクトをやり終えて体感したことばを綴ります。

〈うたこさんのふりかえり〉

「想像を超えていく」

今回、『まどべラッププロジェクト』を終えた時、ぽっと光が灯るような高揚感に包まれました。

この夏にやってみよう!と動きだしてから、あっというまに実現化していったプロジェクト。

かけぬけた後、余韻としてのこったのは、子どもたちの笑い声とぬくもりでした。

 

「こどもってやっぱり面白いな。」

 

「うたこさんとえめさん」の活動で、一貫しているのは、ひとりひとりの子どもたちの言動を物語としてみていこうというまなざしです。このまなざしは、表現域の異なる私たちふたりを結ぶもの。

 

「なにげないことの中に物語があふれている。」その尊さや愛おしさは、私たちがいままで子どもたちと共に時間を過ごす中で学んできたことでした。

 

2020年、コロナ禍の中で、おそらく多くの方にとって、日常のあたりまえがあたりまえでなくなり、多くの制限や絶え間ない変動の中で、この先の楽しみよりも不安に思いがよぎることもあったのではないでしょうか。こんな時風だからこそ、子どもたちの力をかりて、一見、制限と思われる現状の中に、面白さや新しい可能性をみいだしていけるようなことに挑戦してみたいと感じました。そして、それをできるだけそのまま社会に表現(発信)してみたい!とも…。

 

 

実際に会わないという制限の中で、子どもたちと遊びを通して時間を共にし、全体をナビゲートしていく…雑談するなかでうまれていくものに立ち合い記憶するようにその時間を編集していく…そんな役割が自分にあるように感じました。3か月・4回・1回30分という形態(『オンラインパーク』)の連続プロジェクト。まずはオンライン環境の操作に慣れることから始まり、子どもたちにたすけてもらいながら!毎回とても楽しくて、想像以上にこのプロジェクトは自分の日常にとけこんでいました~。なにより驚かされたのは、毎回自分の想像を悠々と超えていく子どもたちの姿でした。

 

子どもたちにとって、「この人は何者か。」よりも「この人は面白いか。」が大切であり、一緒に遊んでいるうちに仲良くなって、まるで公園のように「久しぶり~。」「ばいばい。またね。」と挨拶をかわせました。そこにあまり距離や隔たりは感じず、むしろ、子どもたちはいつも自由で自然でした。そして、子どもたちの方がオンラインという環境を身近で楽しいものととらえているように感じました。また、画面越しに子どもたちと出会うことで、私にとって、ひとりひとりの言動をより繊細にみるという体験にもつながりました。ラップフィルムを持って集合するオンライン上の公園。子どもたちと手をふってわかれた後は、ふしぎな高揚感につつまれて、いつも1時間くらいえめさんとおしゃべりしていました。『オンラインパーク』では、子どもたちが、オンラインだからこそできる、広がる、関係性や創造があること、新たな可能性や価値を知れたのは、自分の想像を超えた光景へとつなげてくれました。時おり、遊びの中で、コロナ禍の中だからこそうまれた言動もみられ、子どもは社会の中で生きる存在なのだと改めて実感します。発信されていくその先で、子どもたちのありのままの姿をみて、どこかぽっと光が灯る…そんな作品になればという『まどべラップ』の編集への熱に変換されていったように思います。ぜひ動画をご覧ください。

 

そして、『まどべラップ』に仲間入りしてくれた子どもたち、『まどべラップ』を見守ってくださったご家族、どうもありがとう!

 


〈えめさんのふりかえり〉

「大丈夫!」

これが、「まどべラップ プロジェクト」を終えた、一番の感触を表す言葉です。

「うたこさんとえめさん」の活動では、私は主に、子どもたちに身体表現を通して、「ものがたり」のうまみを伝える役目を担ってきました。

今回は、オンライン!そこで、この企画の軸である「まどべ」越し(画面越し)で、「からだと声のうごき」を楽しんでもらう役目に、徹しようと思いました。

四角い画面を使って、手や足を映したり、引っ込めたりしているうちに…

子どもたちは、どんどんからだで表現し始めました。突然ハーモニカを吹く、急に画面から消える、画面に逆さまで登場する、バランスボールに座って、ずっとゆれ続ける等々…

「あ、子どもたちにとって、まどべ(画面)は、鏡でもあるんだなー」

このツールは、もともと、自分や他者の上半身と主に対峙しながら、コミュニケーションするもの。それを前に、子どもたちは、上半身に留まらず、いともたやすく全身でまるごと関わり、どんどん「楽しい!」と自分が思える方向に突き抜けていく様子を見せてくれました。自分を見つつ、他の子を見つつ、うたこさんとえめさんを見つつ…

コロナ禍で、子どもたちと「のびのび」過ごせる環境は?と考えた時に、オンライン上をあえて選んだ今回。「うたこさんとえめさん」で、これまで大切にしてきた、子どもへのまなざしは、オンライン上では、こんなかたちに…この動画から感じとっていただけたら幸いです。

 

この動画の一番最後は、子どもの声で締めくくられています。

きっと、そのうち、今回使用したツールをさっと塗り替えるものを、彼らの世代はつくりだし、いのち楽しむ人生を歩いていってくれるような気がします。

このコロナ禍、そんな子どもたちへの、「大丈夫!」という思いがつまった「まどべラップ プロジェクト」が、今後も、飛び火していくことを願ってやみません。